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循環型社会は本当に近づいている?デジタル社会の理想と現実

 世界人口の増加や発展途上国と言われていた国々の発展に伴い、世界では様々なテクノロジーや考え方が生まれています。特に、人類文明の発展に伴うエネルギー問題や環境問題への対策として、「循環型社会」という考え方が大きく支持を伸ばしています。
循環型社会の実現に向け、人々が強い期待を向けているのが、近年急速に進化を遂げているデジタル技術とそれを応用した社会の仕組みづくり、つまりデジタル・トランスフォーメーション(DX)です。
 それでは、現在社会において実践されているデジタル活用を伸ばしていけば、いつか循環型社会にたどり着くのでしょうか。

循環型社会(サーキュラーエコノミー)の実現にデジタルが期待される理由

 循環型社会の実現に関するキーとして注目を浴び続けているのが、デジタル技術です。デジタル技術の進化が今後も進み、社会全体がデジタルを基盤として回り始めることで、循環型社会の実現が近づくという考え方は大変広く広がっています。

 循環型社会の実現に向け、デジタルが期待を集めている理由はシンプルです。
 デジタルはコストが低く、ゴミを出さないからです。

アナログ技術においては、あらゆる情報伝達やサービスの提供は物理的な媒体を必要としていました。情報を伝えるためには紙に印刷したり、看板を掲示したりする必要があります。サービスを提供するためには、店舗を構え、そこへ来訪してもらう必要がありました。
 しかし、デジタル技術を介すればそのようなことはありません。電子メールやWebサイトはインターネット上に存在するデータであり、それを相手に届けるための紙や金属板など、物理的な媒体は不要です。
 情報を印刷した紙は、「情報を伝える」という役割を終えれば廃棄されます。つまり、相手がそれを読み終わった後はゴミになるのです。一方、デジタルであればそのようなゴミは出ない。だからこそ、デジタル技術の革新はゴミの削減、ひいては循環型社会の実現につながると考えられたのです。

循環型社会に反するデジタルの実際

 それでは、現代社会の実際の状況はどうでしょうか。循環型社会の実現を期待できるようなデジタル技術の活用がなされているのでしょうか。
 結論から言えば、それは十分ではないと言わざるを得ないでしょう。

 例えば、あなたのメールボックスを想像してみてください。スパムメールやジャンクメール、いつ登録したのかも分からないようなメールマガジンで溢れかえっていませんか。不要なメールがメールボックスの容量を圧迫し、また必要なメールを埋もれさせ、いつの間にかメールボックスの利便性が落ちてくる。そこで、ジャンクメールでいっぱいになったフリーメールは放置し、新たなメールアドレスを取得する。そんな使い方をしている人も、少なくないと思われます。
 これは、前時代から続く「使い捨て」文化と何ら変わりなく、人々の意識は全く循環型社会へ向かって変化を始めていないとすら感じられます。

 あるいは、インターネットショッピングやサブスクリプションサービスへ目を向けてみます。実店舗を必要とせず、物理的な媒介に依存しないサービスとして循環型社会の一手を担うと考えられているこれらのサービスですが、届いた商品を見ると、愕然とせざるを得ません。
 商品の何倍もの大きさのダンボールに、必要以上に詰め込まれた緩衝材。これらが包まれているビニール袋やA4用紙にデカデカと印刷された納品書は、店舗販売であれば不要なものばかりです。これに加え、商品購入を境に定期的にチラシやダイレクトメールが届くようになることさえあります。
 物理的媒介を減らし廃棄物をなくすという循環型社会のあり方を考えると、正反対の方向へ進んでいると言わざるを得ません。

「循環型」デジタル社会を構築するためには

 それでは、循環型社会の実現に向けてデジタル技術は役に立たないのかというと、そうではありません。むしろ、循環型社会の実現へ向け、デジタル技術が大きな意義を担っているということは間違いありません。本当に意味のある革新のため、変わるべきはそれを利用する人の意識なのです。

 廃棄物が出ないということは、提供されるものは全て、利用者にとって価値のあるものだというふうに言い換えることができます。自分にとって価値ある情報は必ず目を通しますし、何度でも参照できるよう適切に保管しておきます。

 情報を保管する上で、物理的な保管場所を必要としないデジタル配信は、循環型社会において大変意義を持ちます。
また、デジタル技術を使えば利用者にとって価値のある情報だけを届けることができます。
 私たちの生活は、デジタル技術と繋がることによりその多くがデータ化可能なアクティビティとなりつつあります。インターネットショッピングの履歴やサイトの閲覧履歴はもちろん、日々利用する路線の自動改札やお金を管理している銀行のATMなど、一見するとオフラインの生活と思われているものでも、その多くがインターネットに繋がり、データとして蓄積されています。
 これらのデータを正しく活用することができれば、その人にとって本当に必要な情報が明らかになります。もちろんその逆、不要な情報も同様です。
 正確な分析をもとに本当に必要な価値ある情報だけを届けることができれば、デジタル社会におけるムダは大きく削減され、廃棄物のない循環型社会へ近づくことができるでしょう。

本当の意味での循環型社会へ

 循環型社会の目指すところは、ゴミのない社会…というだけではありません。究極的には、廃棄物という概念のない社会が本当のゴールと言われています。つまり、デジタルであろうとアナログであろうと、「不要なもの」が存在しない社会、ということです。
 そのためには、「必要なもの」の再定義が欠かせません。社会を構成する人ひとりひとりが自分にとって、あるいは相手にとって必要なものとは何かを正しく認識しなくては、不要なものを削減することはできません。

 ほんのひと昔前、人は電話を持ち歩くことができるなんて考えたこともありませんでした。それが今や、私たちの手のひらの中で実現できることは、自分の声を相手に届けるだけには止まりません。
 社会のあり方や人の考え方は、このように変わることができます。高度に発達したデジタル技術を正しく使うことができれば、循環型社会の実現も、意外とすぐそこかもしれません。

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